フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第32話>
<32回>
「ちょっとーあんたら何勝手に一緒に座るって決めてんのよー。だいたいここ6人までしか座れないんだけど」
わたしたちが陣取った壁際の4人席の隣には2人がけのテーブルが空いてるけれど、その隣ではわたしの出身中学の制服を着た2人組の女の子でふさがっている。じゃあ、と江口くんが言った。
「じゃあ俺、柿本と座るよ。ちょうどあそこ、空いてるし」って、反対側の壁際を指さす。たしかに2人用のテーブルが空いていた。
わたしを見る江口くんの目はいい? とわたしの意思を確認していない。キスやその先までしてしまっているからか、江口くんはだんだん大胆に、強引になっていく。
でもちっとも嫌な感じじゃなくって、前より雰囲気も明るくなり、もともとおとなしくて目立たない人だったのに存在感が強くなっている。残念ながらときめきはしない。
沙紀のことを好きな中山くん(そうだ中山くんだ、思い出した)がすかさず江口くんに乗っかった。
「おっいいじゃん、カップルはカップルでくっつかねーとなやっぱ!」
「あんたは沙紀と座りたいだけでしょーが」
彩菜がズバッと突っ込んでから、江口くんの代わりにわたしの顔を覗き込んで「いい?」って聞いた。
いいも何も、断る理由がない。江口くんと2人きりになって、今の話を聞かれてないかどうかも確認したかったし。
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