フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第9話>
<9回目>
18歳で野々花を妊娠し、19歳で生んだ。
野々花の父親とは妊娠中に別れてしまって、籍は入れてない。
誰もが幸せいっぱいの顔で自分の子どもを見つめている新生児室のガラス壁の前で、あたしは絶望していた。
これからどうやって育てて行ったらいいのか? どうやって生きていったらいいのか……?
最終学歴は高校中退、エンコーでお小遣いを稼いだことはあるけれど、まともなバイトは一度もしたことない。
絶望に打ちひしがれながら、それでもやすらかな寝顔が、桃の表面のようなやわらかいほっぺたが、希望になった。この子のためならどんなことでもできる、と。
野々花を保育園に預けられるようになると、すぐに働き始めた。
昼間はひそかに憧れていたギャルブランドの店でバイト、それだけじゃ家賃が払えないので夜はキャバクラ。
キャバでも懸命に仕事をし、何人も太い客を持って正当なやり方で稼いでいる子はもちろんいた。
けれども、マメにメールをしたり、髪を耳にかけて媚びを売ったり、そういう小細工で男心を掴むのは、あたしには向いてなくて、アフターで客と寝てお小遣いをもらって生活費の足しにしていた。
「いくらでヤレるか?」って、ストレートに交渉してくる客も多い店だったから。
これじゃあ、風俗と変わんない。なら風俗のほうがいいじゃん、その分稼げるんだし。そう思って、キャバから風俗へのお決まりコース。箱ヘル、ホテヘル、ソープと来て、ドリームガールで4軒目。居心地のいい店だからもう3年近くいる。
スタートは安易な考えだったけれど、風俗嬢になったことは後悔していない。
もちろんいいお客さんばかりじゃない。かなりキツいオプションもある店だし、時にはひどい扱いをされることもあるし、ムカつく男もいる。
それでも野々花のためと思えば、頑張れる。保育園の費用はバカにならないし、進学や将来のことを考えたら、今から貯金はしておきたい。
野々花には将来、お金のことなんて気にしないで、自由に夢を描いてほしい。
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