フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第14話>
<14回目>
「ねぇねー、ママ? 今日もお仕事―?」
「ううん、今日は昼間はお休み。夜まで野々花と一緒だよ」
「じゃあ夜は、お仕事なの?」
「うん、今日は保育園じゃなくて、おばあちゃんのところ行くから」
「わかった」
急に野々花の横顔が暗くなり、あたしの心臓のすぐ横をうんと冷たい北風が通り過ぎていくような気分になった。
時々、野々花に嘘を見抜かれているような気がする。本当は深夜のコンビニでバイトしてるんじゃなくて、本番ありのデリバリーヘルスで見知らぬ男に体を売ってるって。
野々花はちゃんと知ってるんじゃないのか? 家では寝つきがいいのに、保育園に預けた時だけ夜眠れないなんてことが起こるのも、そのせいじゃないのか……?
常識で考えれば、この前奈々子に言われたように、5歳児がそこまで頭が回るわけない。99%、嘘をついてる後ろめたさからくる思い過ごしだろう。でも、残りの1%は?
野々花はたぶん5才にしてはしっかりしてるほうだし、妙に勘がいい。母親の勘なるものがあるように、子どもの勘もまた存在するのかもしれない。
「おばあちゃんに晩ご飯にくまさんハンバーグ作ってくれるように、ママ頼んでおくね」
「本当!?」
気を逸らすためにそう言うと野々花のまあるい目がきらきら輝き出して、ほっとする。いくらしっかりしてても勘が良くても、やっぱり5歳は5歳だ。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。