フェイク・ラブ 第四章〜Iori〜<第22話>
<22回目>
後の祭りって言葉があるけれど、最近のドリームガールは出勤しても、お祭りの後みたいだ。
年末年始の大フィーバー、出勤したら必ず3本4本ついて帰れる、それは毎年のことでどの店でもそう。でも所詮年末年始フィーバーなんてお祭りで、終わったら元通り、いや元の状態以上の暇な時期が、だらだら続く。
いつものカフェに行ったら、なんと改装中。
他にこの辺りで深夜までやっているお店といえば、24時間営業のハンバーガー屋ぐらいしかなく、価格が安い故に、ガキんちょで溢れた騒々しい店内に長居するのは耐えられない。
だから仕方なく店長に電話し、今日は車待機にしてもらった。
それだけでもついてないのに、冨永さんのワゴンに乗って3時間、未だ仕事がついていない。
睡眠不足だから寝れると思ったけれど、お茶を引くかもしれないという恐怖が眠気に歯止めをかけて、眠いのに眠れない。そんなイライラ状態で仕事を待つ。
ずっと新宿中央公園の前で待機していて、ようやくシティホテルに入っていた他の女の子を迎えに行くため、車が動き出す、すぐ止まる。ガラスを突き抜けて車内に入ってくる、シティホテルの看板を照らす白い光が眩しくて目を細める。
「この後すぐ他の子の迎えで3乗せになるんで、はるかさん、後ろに乗ってもらえますか」
冨永さんの声とほぼ同時にドアが開き、細長い体を折り曲げてはるかさんが車内に入ってくる。あたしも背、高いほうだけどもっとありそう。172cmはあるんじゃないのか。
「お疲れ様です」
挨拶と会釈をされ、慌てて返す。
車待機or自宅待機で、女の子同士の交流がほとんどなく、挨拶すらしない子も多い店だけど、珍しく礼儀正しい。結構歳もいってそうだからかな。
はるかさんは年末に入ってきた新人で、まだ一度も挨拶以上の会話をしたことがない。まぁ、別に積極的に仲良くなろうとは思わないし、その必要もないんだけど。
「次、中野まで女の子迎えにいきまーす」
すぐに車は走り出す。
迎え、迎え、また迎え、迎えばっかり。あたしの仕事の指示はいつ来るんだろう?
暇な日が続くと、どうしても苛立つ。貧すれば鈍する、お財布の中身が寂しいと心の余裕も失われる。
中野のこぢんまりしたマンションから出てきたのは、奈々子だった。
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。