泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第14話>
<第14話>
さすがに、疲れた。慢性的な運動不足だから明日はひどい筋肉痛が襲ってきそう。
お腹が減っているのに気付き、ハンバーガー屋さんに入る。
小食なわたしには珍しく、てり焼きバーガーとポテトとオレンジジュースというボリューム満点なセットメニューを注文し、駅前広場を見下ろせる二階の窓際の席で食べる。からっぽの胃に押し込めるように次から次へと頬張りながら、ロータリーを行きかう車を見ていた。
平日の昼間で駅が混む時間帯じゃないのに、始終車が走る。車を出入りするのは中年の男の人と若い女の子が圧倒的に多い。
きっとみんな、吉原に送り迎えしてもらうお客さんと風俗嬢だ。
これまでまったく意識してなかったけれど、わたしが生きるのと同じこの世界に、こんなにたくさんのソープ嬢とソープに来るお客さんがいる。風俗は今まで見ようとしてなかっただけで、特殊な場所でもなんでもなく、みんなのすぐ隣にあるものだ。最初に面接の電話をした時は心臓が狂うかと思うほど緊張したけれど、やってみればどうってことない。
こんなにあっけなく風俗嬢になれてしまう。
20年間、本当に真面目に生きてきた。
小学校中学校高校とずっと優等生で大人の言うことをよく聞く、いい子だった。タバコ一本吸ったことないし、制服だって他の子みたいにカスタマイズして先生に怒られたりしなかったし、髪の毛も染めたことない。不良になって道を外すなんて馬鹿らしいし、自分に何のプラスにもならない、むしろマイナス100以上なんだから勿体ないって思ってた。
風俗で働くのは道を外す、のはこの最たるものだった。
ところがその風俗の世界に、それもソープという風俗の究極に足を踏み入れてしまったんだから、人生何が起こるかわからない。
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