泡のように消えていく… 第一章〜Chii〜<第35話>
<第36回>
「もう、痛くない? 大丈夫?」
「痛いですけど、平気です。我慢できないほどじゃないから」
「ねぇ、どうして処女なのにこんなところで働こうって思ったの? 見たとこ知依ちゃん、真面目そうだし。よかったら、聞かせてくれない?」
初めてわたしの体を必要としてくれた成田さん。こんなに本気で自分を求めてくれた誰かは、今までいなかった。だからわたしは素直に口を開く。
「すごく好きだった人がいたんです。隣の家のお兄ちゃんなんだけど。ほんとに小さい頃から、いつからかよくわかんないぐらいちっちゃい頃から、好きで好きでたまらなくて。すっごく好きなのに、何もできなくて……。その人、今度結婚するんです。しかもできちゃった婚」
告白ひとつできなかったくせに、性欲というものすらもまだよくわかっていないのに、いつかそういうことをするなら、最初の相手は竜希さんだって、決めていた。
絶対に叶えたい夢が絶対に叶わない夢になって、一刻も早く処女を捨てなきゃと思った。
だって、処女でいる限りわたしは竜希さんを思ってしまうだろうから。叶わない夢を追いかけてしまうだろうから。
たとえ竜希さんに由実さんがいても……。
バージンをもらってくれる相手を探すため、ナンパ待ちをした。出会い系サイトに書き込みした。
そういった処女を捨てるための活動を、ヒショカツ、と名付けた。非処女活動、略してヒショカツ。
婚活とか恋活とか妊活とか朝活とか、今どきの流行語のように言葉だけなんとなく軽くしてみたら、大きく重くなり過ぎた思いも軽くなれるんじゃないか? って……。
実際、あんまり効き目はなかったんだけど。
「普通に彼氏を作ろうとは思わなかったの? 知依ちゃん、若いんだし。出会いもたくさんあるでしょう」
「無理なんです、それじゃあ。ちょうど、大学の同じゼミの人で、好きって言ってくれた人がいて。何回かデートもしたけど……。お断りしました」
人気記事
JESSIEの最新NEWSはFacebookページが便利です。JESSIEのFacebookページでは、最新記事やイベントのお知らせなど、JESSIEをもっと楽しめる情報を毎日配信しています。