泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第6話>
<第6話>
ソープはフロントでお客さんが「入浴料」を支払い、その後個室で女の子が直接「サービス料」をもらうってシステムのところも多い。けれども、ローズガーデンはピンサロとか他の風俗店のように、一日の終わりにフロントでその日に稼いだ分をもらうシステムで、お客さんとのお金のやり取りはない。
今日の稼ぎは14時からラストまでで、6万弱。
ぴかぴかのきれいな諭吉さんをお財布に詰めるこの瞬間が、至福の時。
今日もうんと頑張った、颯太くんのために。帰ったら颯太くんにいっぱい褒めてもらわなきゃ。
「朝倉さーん、わたしも先月からナンバースリーなんだから、そろそろ個室待機にしてほしいなー。雨音さん、チクチクいじめてくるんだもーん」
「うららはまだダメだ」
朝倉さんはわたしのほうを見ないままひんやりした声で答える。
クロスの飾りがついたごついリングのはまった指が、ぱちぱち電卓をたたいていた。
「えー、なんでー。今だってお客さん、めっちゃ満足させたじゃないですかー」
「なんでダメなのか、自分の胸に聞いてみるんだ」
にべもない拒絶。ここでこれ以上ねばったところで、一度この人の頭の中で決まってしまったものをひっくり返すのは無理。
ローズガーデンに勤めてもう一年。朝倉さんとの付き合い方も覚えてきた。
仕方ない。
お疲れ様でーすと何事もなかったように明るく言って退散すると、お疲れ、と何事もなかったようなあっさりした声が背中に投げられた。
店の前で待っている車に乗り、他の女の子と一緒に送ってもらう。
既に終電の時間は過ぎているので、自宅まで。住所をドライバーさんに知られるのは嫌だから、家の真ん前じゃなくて歩いて玄関まで2〜3分のところで車を降りる。
車の中で、どんどん後ろに流れていく窓の外の明かりを眺めながら、ずっと考えていた。
いったい、わたしの何がいけないんだろう。自分の胸に聞いてみろだなんて、朝倉さん、意地悪スギ。お客さんを彼氏だと思って、本気で気持ち良くなって、お客さんに喜んでもらえて。風俗嬢として最高の形なんじゃないの?
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