泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第11話>
<第11話>
カラコンも入れてないのにモカブラウンの、日本人にしてはかなり色の薄い瞳がじんわり盛り上がる。わたしよりも白いなめらかな肌にすっと筋の通った鼻、凛々しく尖った顎。
パーフェクトな美形の颯太くんがそんな顔をすると、ペットショップで売れ残りの子犬に見つめられてるみたいに、胸がきゅーんとしぼられる。
「ごめんな。俺、お前に迷惑かけてるよな……。そんな思いまでさせて、支えてもらって」
「ううん、いいの。ほんとに全然、嫌な思いなんかしてないんだから」
カレーライスのスプーンを置いた手を両手で包む。
すべすべしてちょっと冷たいきれいな手は、わたしだけじゃなくていろんな女の子の頭を撫で、手を取り、抱きしめるためにある。そのことを思うとどうしても悲しくなるけれど、颯太くんが親の借金を返しきるまでは仕方ない。
大丈夫、わたしは信じている。
颯太くんはたしかにわたしだけじゃない、いろんな子に笑いかける。でもそれはニセモノの笑顔で、その女の子たちはただのお客さんに過ぎない。わたしがどのお客さんにも特別な感情を持たないのと、一緒だ。
嫉妬する必要がどこにある? 颯太くんの一番はわたしに決まってるのに。
他の女の子に微笑みかける颯太くんを思い浮かべて悲しくなったら、そうやって自分を諭す。
「いや、ほんと俺は最低な男だよ。この部屋の家賃だって、音楽にかかる金だって、みんなお前に出させてるし」
「颯太くんは親の借金を返さなきゃいけないんだもん、仕方ないよ」
「俺が嫌なんだよ、毎日毎日、キモいおっさんたちにお前を好きなようにされて。好きな女がそんな目に遭って嫌じゃないわけないだろ。ちくしょう、俺が不甲斐ないばっかりに」
涙で膨らんだ颯太くんの目を見ていたら、胸のきゅーんがいっそう強くなって、わたしの目からも涙が溢れそうになる。
颯太くんが笑っていればわたしも嬉しいし、颯太くんが悲しい時はわたしも悲しい。2人の感情は鏡みたいなもので、常に連動している。
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