泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第22話>
<第22話>
通話が切れた後も、胸の中はほかほかあったかい。さっきまであんなに苦しかったのが嘘みたい。ほらね、いつも嫌なことの後はちゃんといいことがある。どんなことがあっても颯太くんが傍にいてくれるわたしは、世界一の幸せ者だ。
「ほーんと、いいご身分だね。さっきまで過呼吸でヒイヒイ言ってたのに、その直後に彼氏と電話して鼻の下伸ばしちゃってさ」
雨音さんの意地悪に文字通り冷水を浴びせかけられたようで、胸の中のほかほかが少し冷めてしまう。
「わたし、鼻の下なんか伸ばしてないもん!」
「うららちゃん。今のは彼氏さんから?」
すみれさんが身を乗り出してきた。いつになく真剣な面持ちで、きっちり正座までしている。
「そうだけど?」
「お金、貸してくれって言われたの?」
「うん」
「いくら?」
「50万」
「50万……」
知依ちゃんが大袈裟に目を見開く。50万ぐらいで何、って言おうかと思った。真面目なのはわかるけど、50万ぽっちでこの反応って。よほどヌルい人生生きてきたんだろう。
「なるほどね。ソープ嬢なら出せない額じゃないし、すぐ作れる程度の金か。騙すにはちょうどいい金額設定じゃない?」
「雨音さん! だから颯太くんは、騙したりなんかしないんだってば!」
「ねぇ、うららちゃん、本気で彼のこと信じてるの? ほんとはおかしいなって思ってて、騙されてるの気づいてて、それでも信じたくて無理やり自分を納得させてるんじゃない? 信じないと、うららちゃんを支えてるものがなくなってしまうから」
すみれさんが熱っぽく語り出し、わたしはそっぽを向いて携帯をいじる。颯太くんへのメール、打たないと。
「ダメよ、いい加減に現実を見なきゃ。現実を見る勇気を持たなきゃ」
無視無視。すみれさんの言うことなんか、右から左だ。心をカリカリ、引っかかれるような感じがするけれど、気のせいだもん。
「今か潮時なのよ。ここで言う通りお金を出したら、彼はもっとつけあがる。お金を要求してくる男なんて、優しい顔した借金取りみたいなものなのよ」
知らない。すみれさんの言うことなんか、知らない。あーもう、集中力が乱されるから、絵文字間違えちゃったじゃん! ここにハートじゃなくてドクロマークとか、おかしいし。
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