泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第30話>
<第30回>
次の日の夕方、仕事に行く颯太くんを送り出した後、ママに電話する。ママは電波を通じて驚いて興奮して、テンパって喜んでた。
『えー、マジマジ、じゃーあたしもうおばあちゃんなわけ!? まだ40前なんだよー、ありえないー、ヤダー。あっヤダじゃない、嬉しいんだよ!? ほんっとめちゃくちゃ嬉しいんだからね!?』
心からの喜びを含んだママの声に頬がだらだら緩んでしまう。ほんとにママになって颯太くんと結婚できるんだなと、実感する。大好きな人との未来をひそかに思い描いたことは何度もあるけれど、それがまさかこんなに早く実現するなんて。まったく能天気バカでおめでたいなって、人に笑われてもいい、断言しちゃう。
わたしは間違いなく世界一ラッキーでハッピーな女の子だ。
「これかーら、おかあさんー。そしてー、颯太くんのー、おくさーん♪」
電話の後、適当なメロディをつけて鼻歌を歌いながら支度をした。近所の産婦人科に行こうとして、ちょっと考えて、いつも性病の検査をしてもらっているローズガーデンの近くの病院まで足を延ばす。
「あなたの場合、妊娠の初期症状が出づらくて、気づくのが遅かったのね」
小学校の頃の保健室の先生に似ている丸いメガネをした女医さんは、妊娠が間違いないことを告げた後難しい顔で言った。続く言葉を遮るように、宣言する。
「大丈夫です。わたし、産みます」
「産むって。えっと、あなた……あぁ、未成年ではないのね」
なんて、カルテに目を落としている。心配してくれるのはありがたいけれど、子ども扱いにイライラした。
「未成年じゃないし、ハタチだし、立派な大人です。彼とはもう話し合ったし、結婚して産むことになってます」
「親御さんにはもう言ったの?」
「今日電話したら、喜んでくれました。おばあちゃんになるのね、って」
そう、と口では言っても顔が納得していない。せっかくの幸せ絶頂に水を差されて、気分が悪い。さらに、相手はいくつなのかとか仕事は何をしてるのかとかあれやこれや聞いてくるから、『あなたには関係ないですよね?』って言ってやったら、黙った。母は強し、なんだ。
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