泡のように消えていく…第三章~Amane~<第6話>
<第6回>
少し遠くからこちらを窺っているボーイたちの視線を気にせず、自分がいい大人だってことを忘れたように声を上げて泣いているうららを見下ろし、朝倉さんが大きくため息をついた。 「雨音、うららを待機室に連れて行ってくれないか」 「えー、あたしがですか」 「こっちだって忙しい、これ以上この子を相手してる暇はない。ていうか、このままこんなところで泣かれたんじゃ、お客さんを部屋に通せないだろ」 床にぺったり尻をつけて泣いているうららを見やる。 参ったな。ちょっとでもこの女とは関わりたくない。すごく面倒くさい。何が起こったか、だいたい想像はつくから。 ぎゃーぎゃー泣いてるうららの頬を何度かひっぱたくと、さすがに泣き止み、目に涙をためたままきょとんとして、初めてそこにいることに気づいたようにあたしを見る。腕を引っ張って無理やり立たせ、そのまま待機室へ。 待機室の中には知依とすみれがいて、泣いているうららを見て2人ともいそいそ、駆け寄ってくる。 「うららさん、どうしたんですか?」 「うららちゃん、何があったの? そんなに泣いて……」 あーあ、なんでこの店にはお人よしがわらわら、集まってくるんだろう。他人のことなんかほっときゃいいのに。 心配顔の2人と、2人に挟まれぐずぐずしゃくりあげているうららから離れ、壁際で体育座りした。無性に煙草が吸いたい。 「ほら、まず落ち着いて。鼻も噛んで。ゆっくり話してみて。黙ってたら何があったのかわかんないわよ?」 すみれがティッシュなんか差し出して、いい人ぶりをここぞとばかりに発揮している。
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