泡のように消えていく…第三章~Amane~<第7話>
<第7話> うららは何度かちーんと鼻をかんで、最初は話すことをためらっているみたいだった。 この前、あれだけズバズバ言われて、襟首掴むぐらい反発した相手だ。そりゃあ積極的に話したくはないだろう。 でも、結局はすみれの熱っぽい親切心に促されたのか、口を開く。 「颯太くん……。いなくなっちゃって」 「逃げられたんですか?」 そう言ったのは知依。この子、悪意はないんだろうけどなかなか容赦のないことを言う。 泣きじゃくるうららが力なく首を縦に振った。 「それで、お金、なくて。赤ちゃん、産まなきゃ、いけないのに。病院の、お金、どころか。生活費も、家賃も、払えない……」 「貯金は? あれだけ稼いでたじゃない?」 いつのまにか責めるような口調になってるすみれ。 うららの首が今度は横に振られる。 「お金、全部、颯太くんが、持って、行っちゃった……。今まで、ここで、稼いだ、お金、全部、颯太くんに、あげてて。あたしは、お小遣い、制で。だから、手もとに、全然、お金、ない……。」 「お母さんには相談したの?」 「した。最初は、心配、して、くれた……。でも、今、連絡、つかない……」 待機室にシリアスな沈黙が広がり、すみれも知依も押し黙ってしまう。 男だけならまだしも血の繋がった母親にまで見捨てられるとは。 まさに幸せの絶頂から不幸のどん底へ、見事過ぎる転落劇。 まぁ、話だけしか聞いてないとはいえ、あの母親ならいかにもやらかしそうなことだ。
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