泡のように消えていく…第三章~Amane~<第7話>

2015-02-08 20:00 配信 / 閲覧回数 : 974 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Amane 泡のように消えていく… 連載小説


JESSIE

<第7話>
 

うららは何度かちーんと鼻をかんで、最初は話すことをためらっているみたいだった。

この前、あれだけズバズバ言われて、襟首掴むぐらい反発した相手だ。そりゃあ積極的に話したくはないだろう。

でも、結局はすみれの熱っぽい親切心に促されたのか、口を開く。

「颯太くん……。いなくなっちゃって」

「逃げられたんですか?」

そう言ったのは知依。この子、悪意はないんだろうけどなかなか容赦のないことを言う。

泣きじゃくるうららが力なく首を縦に振った。

「それで、お金、なくて。赤ちゃん、産まなきゃ、いけないのに。病院の、お金、どころか。生活費も、家賃も、払えない……」


「貯金は? あれだけ稼いでたじゃない?」

いつのまにか責めるような口調になってるすみれ。

うららの首が今度は横に振られる。

「お金、全部、颯太くんが、持って、行っちゃった……。今まで、ここで、稼いだ、お金、全部、颯太くんに、あげてて。あたしは、お小遣い、制で。だから、手もとに、全然、お金、ない……。」

「お母さんには相談したの?」

「した。最初は、心配、して、くれた……。でも、今、連絡、つかない……」

待機室にシリアスな沈黙が広がり、すみれも知依も押し黙ってしまう。

男だけならまだしも血の繋がった母親にまで見捨てられるとは。

まさに幸せの絶頂から不幸のどん底へ、見事過ぎる転落劇。

まぁ、話だけしか聞いてないとはいえ、あの母親ならいかにもやらかしそうなことだ。




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