泡のように消えていく…第三章~Amane~<第14話>
<第14回>
「雨音は最近、どう?」
「相変わらずだし」
「彼氏とかできないのー?」
「できないできない。元カレが腐れ縁だけど」
「てことは、ヤッてるんだ?」
「ヤッてないよ。最近全然、そんな気にならない」
「マジでー!? 枯れ過ぎっしょ」
ごくうわべだけの無難な会話が続く。
風俗で知り合った子と本当の友だちになれるわけないと思ってるけど、プライベートの人間関係も似たようなものだ、あたしの場合。
あたしはひなつにも七華にも本当の名前と職業を言ってないし、ひなつと七華の本当の名前と職業を知らない。
まぁ、3人を繋げているものがドラッグじゃあ、仕方ないのか。
ふいに七華の視線があたしの背後に飛び、振り返ると身長180cm超の長身が「よっ!」と小さく手を上げる。
革ジャンにTシャツ、ブラッグジーンズといたって普通の格好の彼を印象づけているのは、その髪型だ。この前会った時には緑と赤と青の3色に染められ、その前は何十本もの三つ編みがうねうね、絡み合っていた。今日はモヒカンにして、刈り上げたサイドにはギザギザと稲妻が走っている。
「遅いよ、澪輝(れいき)」
「ごめんごめん」
まったく悪いと思ってないような、軽い口調。澪輝が時間通りに来ることのほうが珍しい。
「なんかまた、すごい頭にしたね」
スルーできないインパクトを放っている稲妻を見て言うと、澪輝はかすかな笑みを浮かべてモヒカンの先端をつまんだ。感情表現は薄いが、本当は変えたばかりの髪型を自慢したくて仕方ないらしい。
「俺の意思じゃないんだって。毎回、実験台にされてんの」
「例の同僚に?」
「そうそう。そいつ、いっつも派手なのばっか考えんだから」
「そう言っといて、嬉しいくせにー」
刈り上げた稲妻のサイドをじょりじょり撫でると、澪輝は「やめろやめろ」と笑いながら身をよじり、それを見ていた七華に「わぁー、雨音が澪輝とイチャついてるー」と茶化された。
そこへ戻ってきたひなつとミッくんもも、「うっそー」「雨音と澪輝が!」とはやし立てる。
完全に高校生のノリ。
ほんとはみんないいトシのくせして、いつまでも大人になりきれないあたしたちだ。
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