泡のように消えていく…第三章~Amane~<第15話>

2015-02-16 20:00 配信 / 閲覧回数 : 907 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Amane 泡のように消えていく… 連載小説


 

Rizu

 

<第15話>

 

あたし、ひなつ、七華。この3人の中では実際、あたしが一番澪輝と仲がいいし、よくそれを冷やかされるけれど、あたしと澪輝の間には友情以上のものはまったくない。もしかしたら友情すらないかもしれない。

 

ドラッグで繋がってる人間関係なんて、そんなものだ。

 

澪輝の本業は美容師で、副業は麻薬の売人。

 

売人といっても不特定多数には売らず、儲けは無視して仲間内に売ってるだけだから、売人の中でも良心的な部類に入るだろう。

 

「じゃ、そろそろ、行くか」

 

しばらく世間話が続いた後、澪輝の一声であたしたちは立ち上がる。

 

このクラブは古い建物だからトイレは男女兼用で、1階と2階にひとつずつしかなく、2階の個室の前には長蛇の列ができている。

 

5人、ずらっと並んで順番待ち。

 

最初が澪輝、最後があたし。最初に澪輝が入って個室の中にエルの入った茶封筒を隠しておき、1人ひとり、エルと引き換えに代金を入れる。最後に入ったあたしが自分の代金を封筒に入れた後、エルを舌の下に滑り込ませて、全員分のお金が入った封筒を折り畳みショートパンツのお尻のポケットに入れ、トイレを出て封筒を澪輝に渡す。

 

毎回、ネタの受け渡しはこんな流れだ。方法はちょっとずつ違うだろうけど、このクラブでも別のクラブでも、当たり前のように違法薬物はやり取りされている。

 

「やばいー、あたしもう、バッキバキぃ〜」

 

まもなくひなつが目をとろけさせ、ミッくんに寄りかかる。そのミッくんも何か言うけど呂律が回ってない。

 

隣を見れば、七華の顔が既にイッちゃっている。

 

あたしの脳も中心から痺れて、耳の横からぱちばち火花が飛び散っている。

 

平然としているのは澪輝だけだ。澪輝もキメているはずなのに、顔に出ない。客は薬に酔わせても自分は薬に飲まれない、それが売人の基本なのだという。





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