泡のように消えていく…第三章~Amane~<第15話>
<第15話>
あたし、ひなつ、七華。この3人の中では実際、あたしが一番澪輝と仲がいいし、よくそれを冷やかされるけれど、あたしと澪輝の間には友情以上のものはまったくない。もしかしたら友情すらないかもしれない。
ドラッグで繋がってる人間関係なんて、そんなものだ。
澪輝の本業は美容師で、副業は麻薬の売人。
売人といっても不特定多数には売らず、儲けは無視して仲間内に売ってるだけだから、売人の中でも良心的な部類に入るだろう。
「じゃ、そろそろ、行くか」
しばらく世間話が続いた後、澪輝の一声であたしたちは立ち上がる。
このクラブは古い建物だからトイレは男女兼用で、1階と2階にひとつずつしかなく、2階の個室の前には長蛇の列ができている。
5人、ずらっと並んで順番待ち。
最初が澪輝、最後があたし。最初に澪輝が入って個室の中にエルの入った茶封筒を隠しておき、1人ひとり、エルと引き換えに代金を入れる。最後に入ったあたしが自分の代金を封筒に入れた後、エルを舌の下に滑り込ませて、全員分のお金が入った封筒を折り畳みショートパンツのお尻のポケットに入れ、トイレを出て封筒を澪輝に渡す。
毎回、ネタの受け渡しはこんな流れだ。方法はちょっとずつ違うだろうけど、このクラブでも別のクラブでも、当たり前のように違法薬物はやり取りされている。
「やばいー、あたしもう、バッキバキぃ〜」
まもなくひなつが目をとろけさせ、ミッくんに寄りかかる。そのミッくんも何か言うけど呂律が回ってない。
隣を見れば、七華の顔が既にイッちゃっている。
あたしの脳も中心から痺れて、耳の横からぱちばち火花が飛び散っている。
平然としているのは澪輝だけだ。澪輝もキメているはずなのに、顔に出ない。客は薬に酔わせても自分は薬に飲まれない、それが売人の基本なのだという。
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