泡のように消えていく…第三章~Amane~<第33話>

2015-03-06 20:00 配信 / 閲覧回数 : 912 / 提供 : 櫻井千姫 / タグ : Amane 泡のように消えていく… 連載小説


 

JESSIE

 

<第32回>

 

「別れたの、一方的にあたしのせいにする気?」

 

キッチンで立ったままインスタントコーヒーに口をつけながら言う。砂糖をたっぷり入れたはずなのにやたらと苦い。飛鳥がため息をつくような声を出した。

 

「だよな。お前だけのせいじゃないもんな」

 

「今日はもう、帰って」

 

根本的な問題は何も解決していないのだけど、飛鳥は何かを諦めた顔でのろのろと立ち上がり、無言で部屋を出て行った。

 

私は、重い足音が遠ざかり聞こえなくなるまで、立ったままコーヒーを飲んでいた。胸の端っこでは、飛鳥が戻ってきてくれることを望みながら……。

 

なんて都合のいい女なんだと思う。

 

こんな関係をいつまでもズルズル続けていたら、どちらのためにもならないに決まってる。だからといってきっぱり突っぱねることもできず、飛鳥を受け入れることもできない。

 

何も考えずに飛鳥の胸に飛び込めたらどんなにいいか。

 

飛鳥が持ってきた紙くずがベッドのサイドテーブルの上に置きっぱなしになっていた。

 

それに灰皿の上で火をつける。揺れる炎に舐められて黒く変色していく紙きれを見つめながら、煙草を続けて3本吸った。

 




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