泡のように消えていく…第三章~Amane~<第33話>
<第32回>
「別れたの、一方的にあたしのせいにする気?」
キッチンで立ったままインスタントコーヒーに口をつけながら言う。砂糖をたっぷり入れたはずなのにやたらと苦い。飛鳥がため息をつくような声を出した。
「だよな。お前だけのせいじゃないもんな」
「今日はもう、帰って」
根本的な問題は何も解決していないのだけど、飛鳥は何かを諦めた顔でのろのろと立ち上がり、無言で部屋を出て行った。
私は、重い足音が遠ざかり聞こえなくなるまで、立ったままコーヒーを飲んでいた。胸の端っこでは、飛鳥が戻ってきてくれることを望みながら……。
なんて都合のいい女なんだと思う。
こんな関係をいつまでもズルズル続けていたら、どちらのためにもならないに決まってる。だからといってきっぱり突っぱねることもできず、飛鳥を受け入れることもできない。
何も考えずに飛鳥の胸に飛び込めたらどんなにいいか。
飛鳥が持ってきた紙くずがベッドのサイドテーブルの上に置きっぱなしになっていた。
それに灰皿の上で火をつける。揺れる炎に舐められて黒く変色していく紙きれを見つめながら、煙草を続けて3本吸った。
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