泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第25話>
<第25話>
「やめてよそういうの、ウザいから。そりゃ最初のうちはちゃんと育てる気でいるだろうけど、ああいうバカはすぐ現実に打ちのめされて、またホストクラブにでも行って男を見つけて子どもそっちのけで貢ぎだすよ。頭も心も弱いんだから」
「それが、強くなろうとしてるの。うららちゃんはもう、彼氏にべったりのうららちゃんじゃないの。ねぇ、雨音さんも一度うららちゃんに会ってみたら?」
「いい加減にして。あんたのいい人ぶりっこに付き合わされるのは、もうこりごり」
いい人ぶりっこ。その一言が胸の奥深く刺さって、かあっと喉が火照る。
何も、自分を良い人に見せたい、そのためにうららちゃんの妊娠を利用してるわけじゃない。本当に本気でうららちゃんを助けてあげたい、元気な赤ちゃんを産んでほしいと思っている。
素直な気持ちを全否定されて、冷静さを保っていた心がぐらぐら激しく揺れだした。
「いい人ぶりっこなんかじゃないわよ! なんでそんなうがった見方しかできないの? 人の心配するのが、人のために行動するのが、そんなに悪いこと?」
「悪いね。あんたの親切は相手のためじゃなくて、自分のためじゃん! いい人ぶって気持ち良くなりたいだけでしょーが」
まさか、雨音さんは見抜いているんだろうか。
店で優しく丁寧に振る舞うのは、本当の自分を隠したいからって……。
完璧なもう一人の自分を作り上げようと、ずっと必死だった。
「最悪ね!! そういうひねくれた考え方しかできないなんて。雨音さんに何があったのか知らないけれど、今までもこれからもそうやって生きていくなんてすごく可哀想な人だと思うわ!!」
うららちゃんのことは頭から消し飛んでいた。自分の心の痛みだけしか感じられない。
にやりと口元だけで笑いを作る雨音さんが、悪魔に見える。
「ついに本性出したね。いい人ぶりっこさん」
「いい加減にして!!」
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