フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第30話>
【連載小説】フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第30話>
※連載小説は毎日20時配信です。
『第29話~』
ドアに書かれた『霊安室』の文字はあんまり現実味がなく、母親が死んだという現実感もない。
背中でドアが開くなり、室内の空気が変わった。入ってきたのはグレーのトレンチコート姿の背の高い男性。
全速力で走ってきたんだろう、はぁはぁと肩で息を整えながら父親は横たわる母親を一瞥し、それからあたしに向き直った。
母親をちらりと見た無感情な目が、あたしから急速に理性を奪っていった。
「奈々子、ごめん。こんなことになったのは全部お父さんのせいだ」
「……ふざけないでよ!!」
感情が爆発する。涙が溢れる。泣きながらあたしは怒っていた。
ついに現実と向き合わず死の世界に逃げた母親に、そんな母親を見捨てた父親に、そして自分に。
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