フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第32話>
<32回目>
有加は本当に嬉しそうに携帯を操作し、ホームページに公開されているあたしのアルバムから次から次へと写真を表示する。
「奈々子先輩って、案外頭悪いんですねー? こんなのネットに公開してたら、いつかバレますよぉ。だって、この写真目は隠れてるけど、奈々子先輩のこと知ってる人が見たらすぐ先輩だってわかっちゃうもん。髪型とかホクロの位置とか」
有加の言う通り、あたしは馬鹿なのかもしれない。
でも、大学の頃から数えてもう8年以上も風俗をやっていて、その間、1度もホームページとか風俗情報誌の掲載写真とかで、知人に特定されたことはないから、安心していた。
東京にはこれだけたくさんの店がある、その中からたまたま知ってる人に見つかる確率なんてめちゃめちゃ低い。
今の店だって、店長からは「レナちゃん、絶対、目までしっかり顔出ししたほうがいいよー」って言われたけど断って、それで大丈夫って信じてたし。
「なんでわかったの? まさか、たまたまこんなホームページを見てたわけないでしょう?」
言ってしまってから、あぁ、つくづく馬鹿だと思った。
目までばっちり顔出ししてるわけじゃない、これあたしじゃないよってシラを切ればよかったのに……。動揺し過ぎ。
ぷるぷる震えてるあたしの唇を面白がるように、有加はにんまり笑う。
「この前友だちと新宿行った時、西口のロータリー、あるじゃないですかぁ。あそこで車に乗る奈々子先輩見つけてぇ。あれ? なんで、後部座席に乗るんだろう? 彼氏さんじゃないのかなぁ? ってあたしが言ったら、あそこにいるの大体風俗の車だよーって、友だちが教えてくれたんですぅー。
それで、友だちと一緒に、新宿にあるデリバリーヘルスのホームページを片っ端から見てたら、ドリームガールのレナさんにたどり着いたってわけでぇー。すごいですね先輩、ナンバーワンじゃないですかぁ」
「新宿だけでものすごい数の店があるのに、よく一店一店チェックしたね、ご苦労様。もちろん会社の人たちにはしっかり言いふらしてくれたんでしょ?」
目の前の有加の心底楽しそうな顔を見て、みんなのよそよそしい態度がすっと腑に落ちた。
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