フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第25話>
<25回目>
【10年後】
江口くんとのほんのちょっとの経験だけを持って風俗入りしたけれど、長くこの仕事を続けていれば当然、恋愛経験を遥かに上回ってセックス経験が豊かになり、お客さんのテクニックも正確に評価できるようになってしまう。
業界9年のキャリアで判定した長谷部くんのセックスは、随分上手かった。指と舌でわたしの感じるポイントをあっという間に探り出し、絶頂へと導く。
している時はごく優しくて他のお客さんがするみたいに本気でビンタしたりお尻をばしばし叩いたり、濡れてもいないのに極太バイブを挿入したりしないのはもちろん、実は言葉責めが苦手なわたしに余計なことを言ったりもしないし、終始本当の彼氏のように振る舞ってくれる。
感じてる演技だけが得意な風俗嬢だったのに、初めてセックスで満たされることを知った。
でもこんなに上手くて優しく扱ってくれるのは、それだけ経験豊富で余裕があるからなんじゃないのか。高校時代あれだけモテた長谷部くんなんだからいろんな女の子と付き合ってきたはずだし、今も彼女がいたってまったくおかしくない。
わたしにそれを責める権利なんかあるわけないのに、あれやこれや想像しては悲しくなる。あれから三週間か一か月にいっぺんのペースで呼ばれるけれど、この部屋に来るたびに女の子の痕跡がないかどうか目で探ってしまっていた。洗面所に女ものの化粧品がないか、アクセサリーやかわいい小物が床に転がってないか。
「ね、美樹ちゃんってこの仕事、長いの?」
一度繫がった後ベッドに並んで寝転がりながら、髪を撫でつつそう聞いてくれて、ちょっと嬉しかった。今まであんまりプライベートなことを聞かけなくて、それはつまりわたしに興味がないんだと思ってたから。
「長いですね。18の頃からだから……」
「18? 今いくつだっけ?」
「27です」
「あ、俺と同い年だっけ。てことはもう9年か。長っ」
風俗歴が長くてちょっと引かれたかな、と正直に言ってしまったことを後悔する。
風俗嬢とお客さんの間柄、恋人同士に発展する可能性はほぼゼロとはいえ、長谷部くんには少しでもよく思われたい。
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