フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第26話>
<26回目>
「ずっと風俗一本?」
「いえ、普通の仕事もしたことあります。今はドリームガールだけだけど…… この店は2年ぐらいかな」
「ふーん。なんでそんなに長く風俗やってるの? もしかして借金ある?」
「そうじゃないけど。お金、なくって」
「親は頼れない?」
「家出同然で、東京出てきちゃったから」
結局東京行きを認めてもらえなかったわたしは、内緒で東京の大学に願書を出した。長谷部くんと同じ第一志望の大学は落ちたけれど、第二志望の短大には合格し、卒業式の後こっそり家を出た。以来、家族とは一切連絡を取っていない。
東京に出て来てまもなく、お母さんに指摘された自分の甘さを身を持って知った。
お年玉とバイト代のわずかな貯金はあっという間に底をつき、風呂なしワンルームのアパートの家賃も短大の学費も払えなくなった。あれだけ東京で長谷部くんに会えるかもという期待を膨らませていたのに、いざ東京の生活が始まってみるととにかくお金をなんとかしなきゃいけない、それだけで精一杯だった。
東京は18の世間知らずの女の子にちっとも優しくない。家賃光熱費、すべてが高過ぎる。
授業とその時掛け持ちしていた2つのバイトに疲れ切り、短大の近くだった渋谷の町をフラフラして時給のいいバイトを探してたら、スカウトに声をかけられた。抵抗はもちろんあった。でも生きていくためには仕方ない。
最初は渋谷のキャバクラだったけれど、これは3か月しか続かなかった。
きついノルマがあって、達成できない分が罰金になるから時給が良くても深夜の居酒屋バイトと同じくらいしか稼げない。
女の子同士のぎすぎすした雰囲気も嫌だったし、第一引っ込み思案なわたしは初対面のおじさんを前にしてノリのいいおしゃべりができず、お客さんをシラけさせた。
指名がまったく取れなくて、クビになる前に辞めて風俗入りを決意した。
風俗はキャバクラと違ってノルマもそんなにきつくないし、会話のテクニックがなくたって仕事さえちゃんとこなせばかなりのお金になる。
とはいえ、キャバクラと風俗とじゃハードルの高さが違い過ぎた。最初の仕事の後、一人でシャワーを浴びながらこっそり泣いた。
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