フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第37話>
<37回目>
【10年前】
その日、いつも通りに家に呼ばれて、江口くんはついに今まで越えることのなかったハードルを踏み越えた。
パンツの上から不器用に筋をなぞる指が、ついにコットンの生地をめくって中に侵入してきて、全身が波打った。
あん、だか、あぁ、だかわからないけれど、いかにもそれっぽい声も出た。感じてたわけでも、江口くんのために感じてたふりをしてたわけでもなく、驚きと恐怖と、今までギリギリのラインで守ってきたものが、ついに壊される絶望から出た声だった。
「柿本、濡れてる」
耳元で囁く江口くんの声も濡れている。
左手を使って、ずらしたブラジャーの間から伏せたお皿ぐらいしかない胸の膨らみをまさぐり、右手であわただしくパンツを下ろして意思とは無関係に潤っているそこを攻められる。
指で襞をかき分けられてもちっとも疼かないのに、外側でひっそりと、でもはっきりと息づいてるそこをつつかれたら、腰の奥から生まれて初めて感じる不思議な熱がこみ上げてきて、さっきとは違う種類の声が出た。
江口くんはなおも執拗にそこを刺激してくる。恥ずかしいのに、長谷部くんじゃないのに、もっとずっと触っていてほしい。
背中に回した手でいつのまにか爪を食い込ませていて、江口くんは痛かったはずだけど、ひくひくそこを痙攣させ、押し寄せてくる快感の波に耐えながら、初めての絶頂に身をよじるまで、愛撫は続いた。
薄い胸を何度も大きく上下させながら、まだ頭を薄ぼんやりとさせているわたしの隣で、江口くんは後ろを向いてがちゃがちゃベルトを外し、ズボンとパンツを下ろしていた。ぷるんと丸くて可愛いお尻が現れて、慌てて目を逸らす。
「ちゃんとつけたから。大丈夫だよ」
野球部で鍛えた大きな体が覆いかぶさってくる。
ゴムの被膜を被ったものが入口をしばらく探った後、めりめりと裂けるような痛みに襲われて泣き声を上げてしまった。実際、少し涙が出ていた。
江口くんの動きが止まり心配そうに顔を覗きこんでくる。
「そんなに痛い?」
「うん……」
「やめとく?」
「ううん……」
「無理、するなよ」
江口くんは片手でわたしの頭を抱えながらさっきよりも慎重な動きで押し入ってくる。
いくらゆっくりでも優しくても、痛いものは痛い。それでも一度受け入れてしまった以上拒んではいけない気がして、歯を食いしばって我慢した。
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