泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第32話>
<第32回>
「とにかく、わたしは辞めますからね! 絶対、ローズガーデンなんかに戻ってこないもん! ソープ嬢なんて、子どもいて続けるわけないでしょう」
「場所を考えろ。そんな大声を出したら待合室まで聞こえる。今2人、お客さんが中にいるんだ」
「荷物取りに行ってきます」
投げつけるように言ってフロントに背を向けた。朝倉さんはそれ以上咎めもせず怒鳴りもせず、追いかけても来ない。
「あれ、うららさん? 今日から生休じゃ」
待機室に入った途端、知依ちゃんに不思議な顔をされた。その隣には沙和さん。テーブルを挟んで2人と向かい合う形で、雨音さんとすみれさん。4人でテーブルを囲み、何かプリントのようなものを広げている。
「わー沙和さん、久しぶりじゃないですかー」
ナンバーワンの沙和さんの顔を見たのはたぶん、2、3週間ぶりだ。個室をあてがわれている上、朝から晩まで予約で埋まってしまうことも多い沙和さんとは、同じ店で働いてるもののゆっくり話すことは少ない。疎遠なわたしにも沙和さんは遠慮なく、癒し効果抜群の笑顔を向けてくれる。
こんなふうに笑えるこの人には一生敵わないと、沙和さんを見るたび思ってしまう。それはそんなに嫌な気分じゃない。
「ほんとに久しぶりね、うららちゃん」
「お久しぶりですー! てか、こんなところで何してるんですかー?」
「うん、ちょっと時間空いたから、明日の研修会の打ち合わせ。よかったら今回はうららちゃんも、どう?
「わーすごい、しっかりプリントまで作ってー。でもわたしは遠慮しときます、そういうの必要ないし」
「休みなのに何しにきたのよ」
雨音さんがさっそく噛みついてくる。まぁるくカットしたショートカットの頭を横目で窺いながら、ナンバーワンの沙和さんと向かい合う。沙和さんがどうしたの、と微笑はそのままに小首を傾げた。
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