泡のように消えていく…第二章〜Urara〜<第37話>
<第37回>
既に喉はからからで不穏に波打つ心臓が熱かったけど、自分に無理やり言い訳しながらダイニングルームに入る。テーブルの上にメモ用紙が置かれてた。今しがた書かれたばかりのように、ボールペンが添えられて。
『今までありがとう。俺のことは忘れて下さい。カギは郵便受けの中に入れておきます。颯太』
すがる気持ちで玄関へ急いだ。もし郵便受けの中にカギが入ってなかったら、考え直してくれんだと思った。入れようとして、やっぱりやめて、またここに戻ってくるつもりで、合鍵をキーケースに戻したのかもしれない。
郵便受けを開く。カランと音がして、銀色の鍵が光る。
……しょうがないよね。颯太くん、まだ若いもんね。結婚するとかパパになるとか、ひょっとしたらわたし以上に不安かもしれない。でも大丈夫、颯太くんがわたしを捨てるわけない、あんなに好きって言ってくれた颯太くんがこれきりいなくなるなんてありえない、絶対戻ってくる……。
駄目。もう、無理。
ずっと幸せになりたかった。やっと幸せになれたと信じてた。それなのに。
「いーーやーーーーー!!!!!」
気が付いたら冷たい床に蹲って、頭を抱えて叫んでた。絶叫に驚いたのか、隣の家で飼われてる犬が壁の向こうでワンワン吠えだした。けたたましい吠え声から逃げるように、両肩を手で包んで呪文みたいに繰り返す。
そんなわけない。そんなわけない。
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