泡のように消えていく…第三章~Amane~<第16話>
<第16話>
やがて火花が細かく、大きくなり、七色の光を放つ。体の中心が火の玉になってしまったかのように、熱い。いつのまにか膨らんだ踊りの輪に飛び込めば、たちまち人の顔、話し声、音楽、光、温度、五感を通して入ってくる情報がうねりを描き散乱し、ばらばらになってから原型をとどめない形で繋がる。
天井から金色の鳥が舞い降りてきてホールをはばたき、鳥がひとつ羽を動かす度羽毛の間からしゃぼん玉がこぼれ、隣の人の顔が天井まで長く引き伸ばされた。楕円形になった目玉の中に飛び込めば、虹色の海があたしを迎える。クロールで水をかくと浪間からばしゃばしゃ、金色の鯉が跳ねて尻尾をびんびん揺らす。
本当は今でもエスが欲しくて欲しくてしょうがない。その衝動を時々エルをキメてぶっ飛ぶことで、なんとかやり過ごしている。
記憶の中に父親の存在はない。
でも、あたしが生まれてるわけだから当然、母親に精子を提供した誰かがいるわけで、どこかのナンパ男か愛人か、それか母親が昔あたしと同じ仕事をしていたと仮定して、その時の客か。まぁそんなところだろう。
シングルマザーだった母親はあたしが6才の頃に再婚して、その相手がひどかった。
性的なものと暴力とが6:4の割合でミックスされた虐待を毎日のように受け続け、幼いあたしに抵抗する術はない。逆さ吊りにされて風呂に沈められたり、コタツのケーブルで手足を拘束された状態で犯されたりした。
母親は一度も助けてくれなかった。
むしろあたしがヤラれている間は自分が殴られなくて済むので、ホッとしてたんだと思う。お尻の穴にバイブをぶちこまれ泣いて助けを求めるあたしを、部屋の隅っこで煙草をふかして見ていた母親の気だるい目を今でも覚えている。
自分だって相当ひどい目に遭っていたのに別れなかったのが謎だが、スナックかなんかで働いていたみたいだけど常に精神不安定で生活力のなかったあの女のことだ、あんな男でも多少はあたしたちを養ってくれてたのかも。
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