泡のように消えていく…第三章~Amane~<第22話>
<第22話>
そう、経験してない飛鳥にはわからない。
エスをやめることがどんなに苦しいか。
ワイドショーで芸能人がドラッグで捕まったニュースが取り上げられると、必ずといっていいほど『ドラッグを使うなんて最低だ』『なんでやめられないんだ』『強い意志を持って、やめなければいけなかったのに』なんて、コメンテーターのエラいおじさんたちがさんざんに批判するけれど、見ていてすごく腹が立つ。
たしかにドラッグに手を出すのは最低なのかもしれない。
でも、ドラッグをどうしてもやめられなくてやめられなくて、いけないとわかっていてまた同じことを繰り返す、それは普通のことだ。
だって、ドラッグに依存するってそういうことだから。やめられないことそのものが、病気なんだから。
ドラッグの恐ろしさも知らずにドラッグから抜け出せないことを批判する人は、一度自分がドラッグを使ってみて、その強い意志というやつでやめてみればいいんだと思う。
「これ、今日お前に渡そうと思って持ってきたんだけど」
あたしの負け惜しみめいた言葉を無視して、飛鳥はスエットのお尻のポケットから4枚に折りたたまれたパンフレットを取り出し、広げる。
カラー印刷の表はドラッグなどの依存症を専門としている病院の説明で、白黒の裏面はその病院が運営しているピアグループなるものを紹介していた。
『依存症に打ち勝つには、仲間が必要です』という太字と、単純な線で構成された花と鳥のイラストが鼻につく。
「前も言ったけど、こういうの必要ない」
「必要なくないだろ」
「あたしが必要ないって言ってるなら、必要ないの」
「何意地張ってんだよ! そんなの自分で判断できるもんじゃないだろ」
にわかに飛鳥の声に興奮が滲む。
下手したら高校生にも見えそうな、ニキビの散る童顔から目を逸らした。
飛鳥はまったく引かない。
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