泡のように消えていく…第五章〜Sawa〜<第34話>
<第34話>
「でも、前の店の店長いわく、このソープの最高年齢は35歳って話だったんですが……」
「それ、誤情報よ。35歳も37歳も、そんなに変わらないけど」
「ソープって、そんなに歳とっても働けるものなんですね」
「そうね。吉原だとちょっと厳しいけど、地方だと40代になってから未経験で入店してくるソープ嬢もいるみたいだし」
そんな話をしていると朝倉さんが個室に入ってきて、まゆみさんのふんわりした頬がぴりりと引きつる。
ずっと同じピンサロに勤めていたんだからまったくの未経験ではないにしろ、講習らしい講習もせず素人っぽさをウリにしたピンサロと、プロとしてのレベルの高い接客が求められるソープとでは、まるで違う。
まゆみさんの以前の経験なんて、役に立たない。
ただ服の脱がせ方ひとつとっても、わずかな手の動かし方でお客さんに与える印象が変わってくる。よりセクシーに、よりムードを高めるにはどうすればいいか。でもそんなこと、まゆみさんは考えたこともないはずだ。
そして、まゆみさんはわたしも朝倉さんも思わず閉口するほどの不器用だった。
「まゆみ、ちゃんと腕と脚で体を支えて。じゃないと、ちょっと苦しい。いやかなり苦しい」
「ごめんなさい……」
全身泡まみれにさせたまゆみさんが、朝倉さんの背中の上で涙目になっている。
真剣にやってるはずだし覚えはいいんだけれど、この子の不器用さは度を超えている。
頭で考えた通りに体を動かすことが、極端に苦手なのかもしれない。若い割に体も固いみたいで、マットを教えている間3回も脚をつらせた。
ようやく講習が終わった時には、まゆみさんはすっかりしょげていた。
本番なしのピンサロから何もかもが許されているソープへ、決意してやってきたはいいものの、これから仕事するのが不安になったんだろう。フォローの言葉を考えていたら、朝倉さんが言う。
「課題は多すぎるな」
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