フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第18話>
<18回目>
ものすごく久しぶりに初体験の人のことを思い出した。
ツンツン逆立てた金髪、細く削った眉毛、反抗期に相応しく、この世のすべて、つまり大人が作ったすべてを拒絶しているように鋭い、でもあたしを見つめる時だけは優しいカーブを描いた切れ長の目。先生とか高校生とかとすぐ喧嘩して、いつも生傷と煙草の匂いを身にまとってた、刃が出っ放しのカッターみたいな人だった。
それでいてあたしの前では子どもらしく無邪気に笑うから、そのギャップに惹きつけられたのかもしれない。
小学校の頃から経験があって14歳にして既に16人もの女の子と寝ていたという彼は、17人目のあたしをきわめて上手く扱った。
幼い指は、舌は、性器は、どこをどうすれば女の体から快感を引き出せるか熟知していて、彼の腕の中であたしは戸惑いながら恥じらいながら、何度となく高みに突き上げられた。
他の多くの思春期の少年少女と同様、あたしもいざ性の扉を開けるなり、たちまちその世界に夢中になった。
初めて知った恋と性の世界、快感の代償は思わぬところに襲ってきた。
きっかけは、二人でラブホから出てくるところを学校の子に見られたこと。
誰が目撃者か結局わからないままだったけど、ある日登校したら、クラスじゅう学年じゅう学校じゅう、みんながあたしと彼がラブホに行ったことを知っていた。
別にそれまで付き合いを隠していたわけじゃないものの、彼との間にあった具体的なあれこれは内緒にしていた。
「どこまで進んでるの?」そう聞かれても、「まだ中学生だし、そんなことあるわけないじゃーん」ってはぐらかした。
片思いで悩んでいる友だちの前で自分の進んだ経験をおおっぴらにしちゃいけない。
自分が周りと「違う」んだってことを、常に普通であることの安全と鬱屈と戦って神経張り詰めさせている中学生女子たちに知られたら、絶対に迫害される……。
ちゃんと自分を守っていたのに、たった一度の目撃情報ですべて崩壊した。
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