フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第21話>
<21回目>
長谷部くんの後ろ姿を見かける度、江口くんと話す度、気持ちはぐらぐらする。
長谷部くんがまだ好きで奇跡を夢見る一方で、思い通りにならない恋に疲れきっていた。
長谷部くんと加恋ちゃんが笑い合っているのを見ると、体を真ん中からびりびり切り裂かれているような気分になる。この恋心を捨てられたら……? いや、やっぱり捨てたくない。どっちも本当だし、どっちも嘘。
だけど、吹っ切るなら、江口くんと関係を進めるという荒療治だって有効かもしれない。そうなった結果、江口くんを好きになれたら、今よりもずっと楽になれる。
江口くんの家は、小奇麗なマンションの8階で、エレベーターから降りる時、逆にエレベーターにおばさんが1人入っていって、すれちがい様にじろじろ見られた。
もちろん何も言わないけれど、その目は江口くんがこれからわたしを家に連れ込むって知っていて、制服を着ている身でそんなことをするのを咎めているようだった。
「大丈夫、知らない人だから」
江口くんも見られたことに気づいてたんだろう。エレベーターのドアが閉まった後、自分に言い聞かせるように言った。
もう高3だから、周りの子はみんなエッチなんて経験済みだ。
朋子だって沙紀だって彩菜だって。長谷部くんと加恋ちゃんは付き合いが長いから当然そういうこともあるんだろうし……。
焦る必要はないと大人はよく言うし、それを本当だろうなと思う反面、若い盛りの今にエッチをしないのはとても勿体ないことの気がする。処女を捨てることで失われるものもあるのなら、逆にいつまでも処女でいることで失われていくものもあるんじゃないのか?
ブレーキをかけているのは、高校生がエッチしちゃいけないっていう大人が作り出した常識なんかじゃなくて、未だわたしの心に強く根を張っている長谷部くんへの思いだ。
いつかそういうことが自分に起こるなら、やっぱり相手は長谷部くんがいい。
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