フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第27話>
<27回目>
短大に入ったのは東京に行くための口実でしかなかったから、体をすり減らして稼いだお金で学費を払うのは馬鹿馬鹿しく、結局半年で短大を中退した。
とにかく風俗を辞めたい一心で必死に昼間の仕事を探したけれど、資格も学歴もない、おまけに可愛くもないわたしに大した仕事は見つからず、お給料が安すぎたり職場の人と合わなかったりで、いつも長続きしない。
長谷部くんの言うように素直に親を頼れば、好きでもない人とキスしたりセックスしたりしなくて済む。それが出来ないのは風俗嬢になってしまった負い目があるからだ。こんな仕事をしている以上、二度と家族とは顔を合わせたくない。
親にもお姉ちゃんにも何を言わずに通帳を握りしめ、制服のまま少ない荷物を抱え東京行きの特急に乗ったあの日、落ち着いたら必ず家族に連絡するんだって、勝手に出てきたこともちゃんと謝るんだって決意した。
家族を捨てるつもりなんて全然なかったのに、結果的にわたしは家族を捨ててしまった。このまま一生、お父さんにもお母さんにもお姉ちゃんにも会わないのかもしれない。
普段は考えないようにしているけれど、街中でわたしと同い年ぐらいの女の子が母親らしき人とウインドウショッピングを楽しんでるのを見たりしたら、手放してしまったものが強烈に恋しくなる。
そういう事情は当然、話せなかった。長谷部くんは話が面倒くさくなりそうだと感じたのか、興味無さげに言う。
「へー、複雑な事情があるみたいだね」
「そうでもないですよ」
ここで突っ込んだことを聞いてこないのは、わたしに関心がない証拠だ。
根掘り葉掘り聞いて人生相談の相手をされても困るし、風俗嬢になんて体は関わっても心では深く関わりたくないって、本音では思ってる……。
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