フェイク・ラブ 第三章〜chiyuki〜<第29話>
<29回目>
【10年前】
「えーマジッ、じゃあこのままヤッちゃうのぉ!?」
朋子が大声で言って声デカ過ぎ! と横から沙紀に肘打ちをくらった。
最近の放課後の恒例行事、いつもの4人で塾の前にドーナツ屋さんに寄り、2階席でお茶タイム。周りは中学生や高校生、わたしたちと同じ年頃の子ばっかりで、どのテーブルでもおしゃべりと笑い声がはじけてる。
恋の悩みとか進路の悩みとか、心に抱えたモヤモヤから目を逸らすようにわたしたちはよくしゃべり、よく笑う。
「わぁーなんか意外だな。あたし、千幸も江口くんももっとオクテだと思ってたぁ」
そう言う朋子の目は好奇心いっぱいの三角の形をしている。特に美人じゃないけど性格は明るいし見た目も垢抜けてるから、彼氏が絶えない。夏休みに彩菜の家に4人で泊まった時のぶっちゃけトークでは、初体験は高一だって話してた。
「千幸もついにロストバージンかぁ。よかったね、うちらの仲間入りじゃん」
沙紀が指にくっついたドーナツのお砂糖を舐めながら目配せする。女の子から見てもセクシーなふっくらした唇と、マスカラも塗っていないのに長くて濃い睫毛。この中で一番モテるのは、沙紀だ。一番そういう経験が豊富なのは朋子だけど。
「よかったよかった。千幸―、いいよぉセックスは」
「ちょっと朋子! 露骨過ぎだっつーの」
沙紀の二度目の肘内が朋子の右肩に炸裂した。この2人はいつもこうして漫才みたいに笑い合ってる。ボケが朋子で突っ込みが沙紀。わたしと彩菜のように、一年生からずっと同じクラスの親友同士らしい。
女の子二人の親友コンビ×2で成立しているカルテット、薄い関係と濃い関係のバランスが絶妙な4人グループだ。
「ねぇ。千幸、ほんとにこのまま江口くんと……いいの?」
朋子と沙紀が新しいドーナツを買ってくるからと1階に降りて行った後、彩菜が神妙な顔になって言った。みんな食欲旺盛だ。わたしのお皿にはまだオールドファッションが1/3も残ってる。
「いいって、何が?」
「だから。えっちしちゃっていいのかって聞いてるの」
えっち。その単語を出すのも恥ずかしいって感じの言い方。普段はどちらかっていうと男の子みたいなキャラクターだから、こういうところがすごく可愛いなと思う。
そういえばラブホも野外も屋上も経験済みの朋子と違って、彩菜は前の彼氏との2,3回の体験しかないはずだ。
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