泡のように消えていく…第四章~Sumire~<第34話>
<第34話>
それを止めるため、怒鳴っていた。
「いい加減にして! あなたたちには関係ないじゃない! 誰が何と言おうと、ハルくんとわたしは愛し合ってるの! デートクラブだって、わたしが好きでやってるの!」
「だってさ、桃花」
リミが呆れた声で言って、桃花がポテチをかみ砕きながら渋い顔をする。
「ま、あんたの体で稼いだあんたの金なんだから、文句言わないけど。でも自分のために稼ぐならまだしも、人のためってむなしくない? あんた自身が、すり減るだけじゃん」
「そんなのわたしの勝手でしょ」
桃花はフンと鼻を鳴らして、黙々とポテチを食べ続ける。
最初から人種が違うと思っていたけれど、この子たちとは絶対に友だちになんてなれなそうだ。おしゃれや遊びのためだけに加齢臭をぷんぷんさせたおじさんと寝れるんだから、信じられない。
わたしがこの仕事をするために必要だった覚悟は、桃花やリミからしたら笑っちゃうようなものなんだ。
結局、今日も一本で終わってしまった。
これだけじゃ足りない、全然足りない、もっともっと稼ぎたいのに、ハルくんのために。
思い通りにならないフラストレーションは凄まじかったけれど、桃花やリミみたいに一晩中働くわけにもいかない。
夜が更け、店がようやく忙しくなり始めたところで、いい子として親の目を欺かなくちゃいけないわたしは、一本分のお給料をもらって帰る。
駅を目指して歩き出す。
地方の小さな繁華街でも遅い時間は賑わっていて、下水と生ゴミと人々から発される卑しいフェロモンが混ざったような臭いが立ち込め、ムッと鳩尾らへんを刺激する。
酔っ払ってるのか赤ら顔で奇声を発しているサラリーマンや、いかにもキャバ嬢っぽいロングドレス姿の女の人たちを、視界の端にちらちら移しながら足を動かしていると、桃花たちに言われた言葉が耳奥で甦る。わたしを馬鹿にした笑い方や、呆れた声も。
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