フェイク・ラブ 第二章〜Nanako〜<第44話>
<44回目>
27才、既に若い女じゃなくなってきている。
これからもっと、ずっと、醜くなる。
若さと美貌を武器に、チヤホヤされることだけを生き甲斐にしてきたあたしだけど、ドリームガールを永遠に続けられるなんて馬鹿な考えは持ってない。
このまま風俗をやっていれば、いつか必ず訪れる。お客さんにババァと罵られる日が……。
その時、あたしはどうすればいいのか?
ちゃんと自分を愛してくれる人がいたら、風俗をやめても、おばさんになっても、チヤホヤされなくなっても、胸張って顔を上げて歩けるだろうか? そう単純に上手くいくものだろうか?
わからない。
わからないけど、せっかくつかんだ幸せの糸を今離すわけにはいかない。
未来がどうこうなんてぶっちゃけどうでもいい。
あたしは、今、桜介のそばにいたい。
怯えと好奇心の混ざった視線に囲まれて歩きながら、バッグの中身を確認する。よかった。お財布、携帯、全部ちゃんとある。何ひとつ、快晴のところに置いてきてはいなかった。
そして、携帯はメールを受信していた。桜介くんからだった。
長いメールだった。前半は仕事のこととか、昨日見たテレビとか、何気ない近況報告で、もしかしたらそれだけで終わらせるつもりだったのかもしれない。だけど、書いてるうちに気持ちが溢れたんだろう。
肝心な言葉は、メールの最後にあった。
『――レナさんが今の彼氏といて幸せなら、俺なんか忘れて、そのまま付き合い続けてほしいと思う。
でもそれは建前で、本音では彼氏と別れて俺と付き合ってほしい。あなたを幸せにする、なんて大それたことは俺には言えない。俺はまだ24歳の若僧で、仕事でも半人前で、レナさんがいる世界のこともレナさんのこともきっとまだよくわかっていない。
けれど今、何を引き換えにしてでもレナさんと一緒にいたいんです。俺たちふたりで幸せを作っていけませんか?』
ふと思った。
これは依存なのかもしれないな、と。
桜介くんの愛に寄りかかろうとする甘えなのかな、と。
いいんじゃないの? スタートはそれでも。
きっと、あたしは変われる。
こんなに愛してくれる人に、これからは応えていきたいと、ちゃんと思ってるんだから。
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